母親の愛と兄弟の絆
本作では、母親アトランナの愛、そして兄弟の絆も描いている点にも注目である。そして兄弟の絆には2通りの描き方がある。それがオームとアクアマン、そしてコルダックスとアトラン王だ。
オームとアクアマンは異父兄弟ということもあり、前作では王の位をかけて命懸けの戦いを繰り広げたが、本作では世界滅亡の危機を防ぐために2人の力を合わせて、ブラックマンタやコルダックスに立ち向かっている。
その背景には、仲違いしながらも2人は今回の旅を通じてお互いを兄弟として認めており、また助け合う絆が結ばれていたのだと考えられる。
そして2人の絆を深く結んだ存在こそが、2人の母親アトランナの愛である。
異父兄弟である2人を分け隔てなく平等に愛し、2人が力を合わせて困難に立ち向かってほしいと願った母親アトランナの想いがあったからこそ、オームはブラック・トライデントの呪いを跳ね除け、アクアマンはコルダックスを倒すことが出来た。そしてラストシーンでオームはアクアマンに対し「兄上」と言葉を交わしたのだと考えられる。
対してコルダックスとアトラン王であるが、この2人の絆は修復不可能な程に崩壊しており、もはや戦争は避けることが出来ない状態だったと考えられる。
2人の母親の存在が明らかになっていないが、おそらくオームとアクアマンの母親アトランナのような愛で溢れた人物でなかったのかもしれない。
きっと兄であるアトラン王ばかりに目を向けてしまい、弟であるコルダックスは寂しく惨めな想いをしてきたのだろう。
どんなに努力を重ねても弟である自分は決して王になることは出来ない、その現実に直面してしまったコルダックスはネクラスを作り上げ、ネクラスの王として君臨し、挙げ句の果てにはアトランティスの王となるために力を求めたのだ。
その結果がブラック・トライデントであり、アンデッド集団だったのである。
つまり本作は、母親の愛情に飢えた壮大な兄弟喧嘩、と言い換えることも出来る。