つじつま合ってる…? 前代未聞のクライマックスとは? 映画『アーガイル』考察&評価。ジャッキー・チェンからの影響も解説
text by 灸怜太
『キングスマン』シリーズのマシュー・ヴォーン監督が新たに世に放ったスパイ映画『ARGYLLE/アーガイル』が公開中だ。スパイ映画の王道を踏まえながら得意のスタイリッシュアクションてんこ盛りの本作は面白い? つまらない? 忖度なしのガチレビューをお届けする。(文・灸怜太)<あらすじ キャスト 考察 解説 評価 レビュー>
「どんだけスパイ映画が好きなの?」
マシュー・ヴォーンの新たなる挑戦
いまやアクション映画のメインストリームを担っているスパイ映画。敵味方を分けにくい昨今の社会情勢や様々なポリコレが強まるなか、「世界の裏で暗躍する組織と戦う敏腕エージェント」という設定は、ほどよいミステリーや荒唐無稽なアクションを描くにはちょうどいいフォーマットなのだろう。
そんなスパイ・アクションの伝統と様式美を受け継ぎつつ、英国らしいウィットとブラックユーモアを織り交ぜて独特のポジションを築いたのがマシュー・ヴォーン監督の『キングスマン』(2014)シリーズだ。
続編の『ゴールデンサークル』(2017)、プリクエルの『ファースト・エージェント』(2021)まで3作品を撮り終えたマシュー・ヴォーンが、次に挑んだ新作がまたもスパイ映画と聞いたときは「どんだけ好きなの?」とツッコミたくなったが、一段とスタイリッシュに仕上がった『アーガイル』は、これまで以上にツイストの効いた怪作となった。
エリー・コンウェイは、『アーガイル』というスパイが活躍する小説で人気となった女流作家。次作となる5巻目のアイディアに詰まり、飼い猫のアルフィーと共に実家に帰ろうとしていたところ、電車のなかでエイダンという男に声をかけられる。
自称「本物のプロ」だというエイダンは、エリーの書いた『アーガイル』は、現実のスパイたちの姿を描いた“予言の書”で、その展開を巡って抗争が繰り広げられているという。
訳がわからないままスパイたちに命を狙われるようになってしまったエリーは、思いがけず冒険の旅に出ることに…という展開だ。