ギャグすれすれに収まる華麗なアクション演出が圧巻
結果的になかなかの難役といえるエリーを演じるのはブライス・ダラス・ハワード。少し増量ぎみのわがままボディを揺らし、文系巻き込まれヒロインのリアルな雰囲気を醸し出している。相手役となるエイダンを演じたサム・ロックウェルも、「本物のプロは目立たない」を体現した、ちょっとくたびれ気味なビジュアルだ。
この主演コンビを、そこまでスタイリッシュに仕上げていないのは、劇中劇の「アーガイル」と対比させるためなのだろう。ただ、そのおかげで後半のロマンスな展開がいまいち盛り上がらないのも事実。これはキャスティングミスというよりは、作品の構造上、仕方がないのかもしれない。
そのぶん、他の役者たちのキャラは立ちまくっており、特に小説版アーガイルを演じたヘンリー・カヴィルは、バカみたいなカッコ良さ。『ロッキー4』のドラゴをイメージしたという角刈りヘアも最高だ。
そして、マシュー・ヴォーンのセンスが爆発するのが、凝りに凝ったアクションシーンの数々。スパイ映画の王道的なチェイスや銃撃戦もしっかり抑えながら、いままで観たことのないようなエクストリームなバトルが連発する。
優雅で大胆なアクションには、「まるでダンスを踊っているような」という修飾語がつけられるが、本作では、それを具現化したようなダンサブルでカラフルでスモーキーな銃撃戦が登場。
『キングスマン』の教会バトルのような、マシュー・ヴォーンお得意のワンカットアクションも進化しており、クライマックスで披露されるオイル・スケーティングはまさに前代未聞。
キマりすぎてギャグになりそうな、その一歩手前の絶妙なバランスで展開するアクションをニヤニヤと楽しめるかどうかが評価の分かれ目かもしれない。