バディコップものをアップデートした“サークルショット”
今でこそハリウッドを代表する俳優のひとりとなったウィル・スミスだが、『バッドボーイズ』が公開された90年代半ばの日本ではほぼ無名で、相棒のマーティン・ローレンスの方がコメディアンとして知名度があった。だが、そんな2人も、作中では丁々発止のやり取りで観客の目を釘付けにしてきた。
監督のマイケル・ベイは、そんな2人の生命力に満ち溢れた情熱的な演技に惚れ込んでいたのだろう。物語の展開は、よくあるバディコップものを踏襲していたし、カメラワークも決して斬新ではなかったが、最上級に格好いいショットで2人の良さを引き出そうと考えていたに違いない。そして、この情熱が、旧来のバディコップものに新たな命を吹き込んだのだ。
中でも印象的なのが、2人を中央に捉えてカメラを旋回させる“サークルショット”だ。鋭角で煽りながら旋回させることでマイアミの青空と2人の表情を同時に捉えるこのショットは、事件解決の困難さと、思わず天を仰ぎたくなるような悔恨の情を表している。
サークルショットほどではないが、はだけたシャツでカメラに向かって走るウィルと、ド派手な爆発をバックに手前に走ってくる高級車のカメラワークも印象的だった。特に、ウィルがクローズアップになっていくショットは非常にヒロイックで美しく、キャリアの成功を予感させるのに十分だった。