FPS風カメラワークが生む新たな映画体験
現在公開中の『バッドボーイズ RIDE OR DIE』の最大の見せ場は、ウィルとマーティンの身体に“スノーリーカム”と呼ばれる大型のリグ(カメラの補助機材)を装着し、アクションと演技を自撮りさせたシーンだろう。作品公開前にアップされた舞台裏映像が話題を呼んだのも記憶に新しい。
ただ、ウィルの手の動きから、スマホのインカメラとアウトカメラを行き来するような、FPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)を彷彿とさせる映像になることは予想できたために、観客は、鑑賞しながら撮影シーンの答え合わせができたはずだ。実際のショットに絵的な目新しさはなかったものの、能動的な鑑賞という意味では斬新なシネマ・エクスペリエンスだったと言えるのではないだろうか。
2人の『バッドボーイズ』ももはや定年を迎える年齢となったため、コンビでの次回作は期待できないかもしれない。少し寂しい気もするが、もしかするとマイケル仕込みの設定やカメラワークのスピリットを受け継いだ斬新で挑戦的な続編が制作される可能性はある。願わくば、主役も脇役も一緒くたにクレジットされるオリジナルの『バッドボーイズ』のエンドロールのように、新人の俳優や監督の飛躍のきっかけとなるような作品にならんことを。
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