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①タイトルの意味:ボーは何をおそれているのか?

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しかし一体、ボーは何をおそれているのか?

映画を観終わった観客が真っ先に思うのは「彼の母親・モナが恐怖の元凶なのではないか」ということだろう。

ボーの母親モナは、社会的に成功している経営者であり社会的強者と呼べる存在だが、息子のボーは、独身・貧乏・童貞・中年・精神不安定の、いわゆる社会的弱者と呼べる存在である。

本来であればボーは、モナの跡を継いで会社の経営者になっていてもおかしくはない。劇中で詳しく説明されることはないものの、モナは本来であれば後進にポストを譲ってしかるべき年齢に差し掛かっていながら、事業の中心に居座っており、ボーに会社を継がせる気はさらさらないようだ。

また、ラストシーンにかけて徐々に明らかされるのは、ボーは幼い頃から母親モナの言いなりであり、母親の会社の広告にも登場していたという事実である。

加えてボーは働いている描写がなく、おそらくニート。クレジットカードは所持しているが、何故か使用出来なくなっており、これはカードの名義人であるモナが意図的に止めたということが考えられる。

つまりボーの人生は、母親モナによって完全にコントロールされているということだ。

しかしながら、本作をつぶさに見てみると、描かれる恐怖描写は、母・モナに起因するものにかぎらないことがわかる。

たとえば、ボーが暮らしているマンションの入り口で待ち構えているスキンヘッドの男は、理由もなくボーに襲いかかってくるし、冒頭に描かれる見知らぬ他者の飛び降り自殺、それに嬉々としてスマホを向ける聴衆をとらえたシーンからは、この世の終わりを思わせる、終末的な雰囲気が濃厚に感じられる。

また、本作は全編を通してボーの見る夢であると解釈が可能である。その点を踏まえると、すべての恐怖描写は、どんな些細なことにも不安・恐怖を見出してしまうボーの内面に起因していると考えることもできる。

つまるところ、ボーに恐怖を強いている要素は一つではない。些細な出来事にも恐怖を見出すボー自身の心、そんな彼を育て上げた抑圧的な母親、そして彼を取り巻く“狂った世界”。それらの要素が複層的に絡み合って、本作の“恐怖”は形成されているのだ。

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