②理不尽なラストの意味とは?
ラストでは、”最後の審判”が描かれる。
ボーは、海上裁判所とも思える場所で、モナと弁護士コーエンから今までの行動について糾弾され、最終的には乗っていたボードが爆発して転覆、そしてボーは溺死してしまうのである。
周知のとおり、「神が死者に対し、天国行きか地獄行きか、審判を下す」のが最後の審判の果たす機能だ。
ボーの人生は、弁護のしようがないくだらない人生であった。そんなくだらない人生を大勢の聴衆の前で暴露され、否定され、挙句の果てには深い水の底に沈んでいく。ボーの人生に“天罰が下った”と感じさせるラストだ。
しかしである。ボーは主体性のかけらもなく、優柔不断な人生を送ってきたのは間違いないにしても、彼が意図的に他者に害を与えたり、悪意を向けるような描写は皆無だと言っていい。誰が観ても、彼に下される“天罰”はきわめて理不尽に映るのではないだろうか。
この理不尽なラストを考察する上で注目したいのは、最後の審判の舞台が、スクリーンと観客席を有した、映画館の比喩として描かれているという点である。