人間の本質を問う「レプリカント」の存在ー脚本の魅力
本作の脚本は、当初、ハンプトン・ファンチャーが担当していたが、スコットとの意見の対立から降板。その後、新たに起用されたデヴィッド・ピープルズは、機械を連想させる「アンドロイド」に代わり、新たな言葉を考案するようスコットから依頼された。そこで彼が生み出した言葉が「レプリカント」だった。
レプリカントとは、遺伝子工学技術の進歩で生まれた人造人間のことで、生物学の用語「レプリケーション(細胞複製)」が語源になっている。彼らは、科学者と同等の知力と優れた体力を有し、過酷な奴隷労働や戦闘を強いられている。
ここで問題なのは、彼らが極めて精巧にできており、ヒトの見分けがつかないということだ。さらに第6世代ともなると実在する人間の記憶を移植することも可能になる。つまり、テクノロジーが発展するほどに、ヒトとレプリカントはイコールな存在になっていくのだ。
本作は、これまで人間の奴隷であったレプリカントに感情が芽生え始め、人間に反旗を翻すところから物語がはじまる。「創造主」たるヒトと全く同じ存在であるにも関わらず、なぜ我々は人間から虐げられなければならないのか―。そんな彼らの問いは、そもそも人間とは何かという哲学的な問いを浮き彫りにする。
AIが目覚ましい進化を遂げている現代。人間と変わらない見た目のバーチャルヒューマンや、人間の代わりに働いてくれるヒューマノイドロボットも登場している。人間と彼らの見分けが付かなくなる日もそう遠くないのかもしれない。