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CGなしで実現した圧倒的な世界観―映像の魅力

ブレードランナー
映画ブレードランナー劇中写真Getty Images

本作の映像といえば、ハードボイルドなネオ・ノワールを基調とした世界観が挙げられるだろう。酸性雨が降りしきる退廃的な世界観は、公開当初はウケが悪かったものの、現在ではカルト的な人気を誇っており、2007年に視覚効果協会が発表した「視覚効果面で最も影響力がある50本の映画」では堂々の第2位にランクインしている。

とりわけ驚きなのが、本作にCGが全く使われていないことだ。本作は、模型を使った最後のアナログSF映画とされており、完璧主義者のスコットだけに、特撮のシーンでは30回撮り直すこともざらにあったという。オープニングをはじめとする観客の度肝を抜くような映像の数々は、CG全盛の現在でも全く古びていない。

なお、本作の美術デザインを手掛けたのは工業デザイナーのシド・ミード。「ビジュアル・フューチャリスト」として知られるミードは、当初車両のみをデザインする予定だったが、「工業製品は使用される環境や状況とセットでデザインしなければならない」とのポリシーから、都市の外観から室内のインテリア、コンピューターのインターフェイスなど、あらゆるデザインを担当するに至ったという。

また、本作のこういった世界観は、シナリオの初稿を書いたハンプトン・ファンチャーが、フランスの漫画家メビウスによるバンド・デシネ『ロング・トゥモロー』の「混沌とした未来社会でのフィリップ・マーロウ的な探偵の物語」をイメージしていたためとされている。

なお、作中のネオンに日本語が多く書かれていることについては、スコット自身新宿・歌舞伎町の様子をヒントに描いたことを理由として挙げている。

また、都市の外観は香港がモデルとなっており、本作の製作総指揮には香港のショウ・ブラザーズ社の創設者である邵逸夫(ショウ・イップ)の名がクレジットされている。

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