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映画史に残る斬新なラストシーンー映像の表現

映画『明日に向かって撃て! 』の劇中写真【Getty Images】
映画明日に向かって撃て の撮影現場の一幕Getty Images

本作には、監督のジョージ・ロイ・ヒルらしい斬新な映像表現が随所に使われている。

まずは冒頭、サンダンスが酒場でポーカーの相手に、イカサマ扱いをされる「ツカミ」のシーンでは、画面全体がセピア色に沈んでおり、その後2人が酒場を後にするシーンでゆっくりとカラーに変わっていく。観客の視線を一気に物語に釘付けにする秀逸な演出だ。

極め付けは、本作の最後だろう。警官隊に包囲されたブッチとサンダンスは、立てこもった建物の中で「次はオーストラリアに行こう」などと軽口を叩いた後、拳銃片手に建物から飛び出す。その瞬間、画面はストップモーションになり、無数の銃声が響き渡る。そして、画面はカラーからセピア色に、ミディアムショットからロングショットに転じる。

ロイ・ヒルは、本作の制作にあたり、「ブッチとサンダンスの最期を観客に見せたくなかった」と語る。ストップモーションのまま止まった2人は、決して銃弾に倒れることなく、オーストラリアに行くという夢を抱いたまま永遠に止まっている。

あまりにも美しく、そして衝撃的な、映画史に残るラストシーンとなった

なお、本作の撮影を担当したのは、『アメリカン・ビューティー』(1999年)などで知られるコンラッド・L・ホール。ドキュメンタリー作品などを数多く手掛けてきた彼は、逆光を多用し、露出をオーバー気味にしてあえて煙や埃を立たせることで、西部劇らしい霞んだ画作りに成功している。

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