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「目に見えるものが本当とは限らない」

映画『めくらやなぎと眠る女』
© 2022 Cinéma Defacto – Miyu Productions – Doghouse Films – 9402-9238 Québec inc. (micro_scope – Productions l’unité centrale) – An Original Pictures – Studio Ma – Arte France Cinéma – Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma

 かえるくんという非日常を体験した片桐は小説「アンナ・カレーニナ」を手にすることで自分はアンナ・カレーニナのようなフィクションの世界の住人ではないことを再確認しているように感じられた。同様にわたしたちも映画や小説というフィクションに没頭することで自分は実在する人間であると再確認しているのではないだろうか。
 
 物語の登場人物は自分が実在していないことに気づいていない。一部のメタフィクションを除いて。気づいているのは彼らの創造主である作者と読者だけだ。

 その前提の中で、わたしたちは自分が物語の世界で生きるフィクションではないと言い切ることができるだろうか。日常と非日常がどんどん曖昧になっていく、この世界で。

「目に見えるものが本当とは限らない」のだ。

(文・青葉薫)

【作品情報】

『めくらやなぎと眠る女』
2024年7月26日(金)より ユーロスペース他全国ロードショー
監督・脚本:ピエール・フォルデス
原作:村上春樹(「かえるくん、東京を救う」、「バースデイ・ガール」、「かいつぶり」、「ねじまき鳥と火曜日の女たち」、「UFOが釧路に降りる」、「めくらやなぎと、眠る女」)
オリジナル(英語)版キャスト:ライアン・ボンマリート、ショシャーナ・ビルダー、マルセロ・アロヨ、スコット・ハンフリー、アーサー・ホールデン、ピエール・フォルデス
日本語版キャスト:磯村勇斗、玄理、塚本晋也、古舘寛治、木竜麻生、川島鈴遥、梅谷祐成、岩瀬亮、内田慈、戸井勝海、平田満、柄本明
2022/109分/フランス、ルクセンブルク、カナダ、オランダ合作
原題:「Saules Aveugles, Femme Endormie」
英語題:「Blind Willow, Sleeping Woman」
配給:ユーロスペース、インターフィルム、ニューディアー、レプロエンタテインメント
公式サイト
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公式Instagram

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