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世界中のエロサイトへのアクセスを激減させたゲーム『Fallout』の圧倒的な影響力

© Amazon MGM Studios
© Amazon MGM Studios

ゲーム『Fallout』は世界中で大ヒットしたロールプレイングゲームのシリーズ。『Fallout4』は2015年の発売日(欧米で11月10日、日本版は12月17日)初日に1200万本のセールスを記録。本作発売直後には一時的に世界中のエロサイトへのアクセスが激減した(『ゲームラボ』2016年1月号)というから、その人気のほどがわかるだろう。

『Fallout』のプレイ内容についてはここで省くが、本ゲームで特筆すべきはその世界観だ。

戦後アメリカにおける冷戦期の社会不安と、原子力(核)エネルギーを基にした科学による明るい未来志向、いわゆる進歩主義をカリカチュアライズしたブラックでシニカルな狂った世界はとてもユニークである。

こうした冷戦期における進歩主義による科学信仰と核戦争への不安がセットになった精神性は実際に50年代から60年代のアメリカにあり、未来学という学問となって現れた。東西冷戦の先行きが不透明な社会不安のなかで拠り所となる「代替的な未来(alternative futures)」を提示するため、「2000年委員会」なるものがアメリカ芸術科学アカデミーによって発足されたのだ。

委員会の議論ではテクノロジーの進歩がもたらす豊かな生活や民主主義の理念の広まりによる平等の社会などがあげられており、まさに『Fallout』の世界そのままの精神性である。

結局のところ委員会が提示する未来予測は楽観的な議論にとどまり、また社会主義への対抗言説でもあったために「未来学」という学問は冷戦の雪解けとともに凋落の一途を辿ったという(三添篤郎『冷戦期アメリカの誕生』小鳥遊書房刊)。

そう、『Fallout』の世界とはシニカルでブラックなジョークのような世界なのである。

ドラマでは第一話が始まるとまず画面に映し出されるのは「THE END(終わり)」というエピソードタイトルである。そしてカリフォルニアに複数の核ミサイルが着弾し、静かにキノコ雲が立ち上る。“世界の終わり”から物語が“始まる”のだ。

ドラマの監督であるジョナサン・ノーランは日常生活に支障をきたすほど『Fallout3』にハマったという筋金入りのファンであり、この人なくしてこれほどの完成度を誇ることはなかったのではないだろうか。

そしてドラマの最終話ではゲームファンにとっては驚きのラストシーンもあり、シーズン2が待ち遠しくてゲームの『Fallout4』をプレイする毎日なのである。

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