合わせて読みたい一冊
『少年と犬』ハーラン・エリスン(浅倉久志+伊藤典夫・訳『世界の中心で愛を叫んだけもの』ハヤカワ文庫SFに所収)
核戦争という終末世界の物語を描いた『Fallout』は多くのリファレンスがある作品ではあるが、なかでも基礎教養として読んでほしいのはハーラン・エリスンの中篇『少年と犬』(浅倉久志+伊藤典夫・訳『世界の中心で愛を叫んだけもの』ハヤカワ文庫SFに所収)である。
第三次世界大戦によって文明が崩壊した世界で、欲望の趣くままに生きる少年アルバートと人間の言葉を話す知性と理性を兼ね備えた犬のブラッドの一人と一頭の物語である。
1969年にネビュラ賞長中篇部門を受賞した本作は、今となっては時代的に少々ミソジニー的な内容が気になるものの、特筆すべきは現在にまで続く核戦争によるポスト・アポカリプスのイメージを形作った最初期の作品であること。
本作は1975年に若かりしドン・ジョンソンが主人公を演じて映画化もされており、「終末世界と犬」のイメージはあの『マッドマックス2』(1981)へと受け継がれ、マックスは赤いスカーフを巻いた犬と行動を共にする。
ゲーム『Fallout3』では相棒として『マッドマックス2』と同じ犬種のオーストラリアンキャトルドッグが登場する。また『Fallout4』ではジャーマンシェパードとして登場するが、これはおなじくポストアポカリプス映画『アイ・アム・レジェンド』(2007/原作はリチャード・マシスンの同名小説)の愛犬サムからのレファレンスだと思われる。
そしてもちろんドラマ版『Fallout』にもCX404という名で犬が登場。そのほかドラマのエピソード6では主人公のひとりで核戦争前にはカウボーイ俳優であったクーパーが主演した映画ポスターがちらりと映るが、そのタイトルは“A MAN AND HIS DOG”。もちろん『少年と犬』の原題は“A Boy and His Dog”なのである。
(文:すずきたけし)