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ゴジラの怖さが5割増しとなったワケ

©2023 TOHO CO., LTD.
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山﨑監督によると主人公の神木隆之介や典子を演じる浜辺美波をキャスティングしたのも、現代的な顔つきではないことや、往年の東宝の女優のもつ匂いなど昭和に合った作品世界に合わせたものだということで、本作はスクリーンの隅々まで気を配った画作りが感じられる(ここでだれしもが思うのは「『SPACE BATTLESHIP ヤマト』と同じ監督とは思えない」ということだがそのあたりを掘り下げるのは本稿の趣旨とは離れてしまうのでここでは控えようと思う)

そしてモノクロによって最も印象が変わったのはもちろん本作の主役「ゴジラ」である。

カラーとモノクロの見え方の大きな違いはその明暗の階調である。カラーではその光と色の階調の表現によってカメラが映し出す対象に空間的奥行きを感じることができる。しかしモノクロでは明暗のコントラストが強調されるため、あのゴジラの異様な皮膚の凹凸がより一層グロテスクに映し出され、また深く落ち窪んだ眼窩はさらに深みを増す。

モノクロバージョンのゴジラはカラー版と比べて2割増し、いや5割増しくらい、抗うことができない破壊神としての畏怖を感じることができると断言したい。

特に銀座のシーンはモノクロバージョンになると恐怖の存在としてのゴジラが際立つ。というかモノクロバージョンでもっとも観たかったシーンでもある。そしてその期待は裏切られることはなかった。

熱線を放ったゴジラの背後に立ち上る巨大なキノコ雲は、モノクロで描かれることによって、原子爆弾のメタファーであることがより強調され、広島、長崎に続く“三度目の絶望”を圧倒的なスケールで体感させる。

また直後に降り注ぐ黒い雨はカラー版よりも鮮烈な印象を残していることも付け加えたい。また黒い雨はそれこそ黒澤明が『羅生門』(1950)においてモノクロフィルムの弱点であった雨の描写を墨汁を混ぜた水を使った有名なエピソードと重ねることもできる。

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