名称たちがこぞって試みるモノクロ化
近年の映画作品を見渡せば、今回の『ゴジラ-1.0/C』のように公開後にモノクロバージョンとして公開されることは珍しくない。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)ではソフト化の際に「ブラック&クロームエディション」が収録され、その記念として劇場でも同バージョンが公開されている。
また、2019年の『パラサイト 半地下の家族 モノクロVer.』(2019)は、監督であるポン・ジュノが往年の名作たちへのリスペクトから長年憧れていたモノクロバージョンが生まれている。
また近年高く評価されている映画の中には、撮影段階からモノクロとして撮影された作品も少なくない。
例えば、1960年代のアイルランドをカラーとモノクロを併用するスタイルでノスタルジックに描いたケネス・ブラナーの『ベルファスト』(2021)。第91回のアカデミー賞で外国語映画賞、監督賞、撮影賞を受賞したアルフォンソ・キュアロンの『ROMA ローマ』(2018)もまた、70年代初頭のメキシコという過去をモノクロで描いている。
上記の作品はいずれも監督の幼少期を描いた自伝的な作品である。もちろん、彼らが子供の頃に見た世界には色があったはずである。にもかかわらず、過去の出来事を映画にする際にはモノクロによって表現されるのが面白い。
『ゴジラ-1.0/C』と同様にモノクロの映像が「過去」というイメージとイコールで人々に共通した認識となっていることを改めて考えさせられ、映画史だけでなく、映像と人間のイメージの受容という大きな視点から見ても興味深いものである。
とはいえ、モノクロである『ゴジラ-1.0/C』はそこまで肩ひじ張らずに見てほしいし、怖さ5割増しとなったゴジラを見る価値があるバージョンなのであった。