3.キャスト陣の演技が素晴らしい
公開後、アクションシーンよりもドラマパートの多さが話題を集めた『ゴジラ-1.0』。役者陣の迫真の演技派、作品を格調高くすることに貢献している。映画評論サイトCBRのハンナ・ローズは本作について「驚異的であり、信用のできる、愛すべき演技がある」と評価。
本作の主人公である敷島浩一に扮し、複雑で引き裂かれた感情を巧みに表現した神木隆之介を筆頭に、才能溢れるキャストが集結。敷島と共に暮らすことになる女性・典子を演じた浜辺美波は、名実ともに日本トップクラスの若手女優であり、戦後を力強く生き抜こうとする女性を説得力豊かに演じている。
また、日本アカデミー賞受賞経験のある役者陣の活躍も見逃せない。ゴジラ破壊計画の首謀者・野田健治を演じた吉岡秀隆は、ユーモアと劇的緊張のバランスを巧みにコントロールした芝居に徹し、敷島が乗り込む「新生丸」の艇長・秋津を演じた佐々木蔵之介は、瞳に情熱を宿した演技で映画を牽引している。
アメリカ版リブートである映画『GODZILLA ゴジラ』(2014)や、映画『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)などの近年を代表するモンスター映画では、シリアスな展開を緩和する”コメディリリーフ”や、作品内で起きている状況を解説するキャラクターが不在であり、それが作品の弱さにつながっていた。
かたや、映画『ゴジラ-1.0』は、力強い人間ドラマを中心に物語が展開する。心に傷を負う主人公・敷島がシリアスな演技に徹する一方、上述の野田や秋津に加え、成熟していないが威勢だけはいい見習い乗組員の水島(山田裕貴)も濃密にドラマに絡む。サブキャストがそれぞれユニークで必要な役割を果たしているのだ。