4.視覚効果が素晴らしい
映画『ゴジラ-1.0』の製作費は、一般的なハリウッド大作に比べると控えめだ。しかし、限られた予算の中で、山崎貴が成し遂げたことにはいささか驚かされる。
VFX(視覚効果)の名手としても知られる山崎。本作におけるゴジラの破壊描写は軒並み素晴らしいが、特に注目したいのは、ゴジラが口から放つ”放射熱線”。本作で描かれる放射熱線は、他の映画では観たことのない圧倒的な迫力を誇っている。熱線が放たれた先に立ち昇るキノコ雲は、多くの識者が指摘しているように原子爆弾を想起させるが、本作が描く絶望的な破壊力を誇る放射熱線は、戦争を経験したことのない世代にも、その恐ろしさを追体験させるものとなっている。
一方、映画『ゴジラ-1.0』で用いられる視覚効果は、映画『ジュラシック・パーク』(1993)や、映画『ジョーズ』(1975)といった、古典的な映画作品からの引用もふんだんに散りばめられている。とりわけ、ゴジラの全身をいきなり映さず、足音や気配から徐々に存在を露出させていくやり方にその影響が見られるだろう。つまるところ、『ゴジラ-1.0』は、初代『ゴジラ』のみならず、過去のハリウッド大作への敬意も欠いていないのだ。
映画評論家であるケイティ・ウォルシュは、現地メディアTribune News Serviceにて「山崎の美的感覚も古典的で、1940年代のレトロなスタイルと最先端の視覚効果が融合している」と語る。
多くの若い映画ファンは、ゴジラという存在が、大きなスクリーン上でこれほど映えるものだとは思ってもみなかったのではないだろうか。