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もし現実にゴジラが襲来したら…世界はどうなる? 軍事に精通するライターがガチシミュレーション。映画『ゴジラ-1.0』論

text by 宮永忠将

全世界興行収入140億円のスマッシュヒットを記録している『ゴジラ-1.0』。戦後の荒廃した日本を蹂躙するゴジラの姿に恐れおののいた観客も多いことだろう。そこで今回は、もしゴジラが2024年の世界に現れたら、というテーマで安全保障の観点から考察。ただゴジラを倒すだけでは終わらない、世界の難しさが明らかになりそうだ。

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【著者プロフィール:宮永忠将

昭和48年生まれ。上智大学文学部史学科卒業、東京都立大学大学院人文科学研究科中退後、雑誌編集者、Waargaming.netの品質保証担当などを経て、現在はフリーランスで執筆、編集、翻訳や映画、アニメーション、ゲーム作品の監修などを手がけている。第二次世界大戦を中心に軍事全般を扱うが、現在は世界的に進む欧州戦史の再評価を咀嚼して、日本のミリタリーシーンに紹介する活動に力を入れる。主著『ウォーズ・オブ・ジャパン』(偕成社)、『ファンタジー世界構築教典』(宝島社)など。Youtube「宮永忠将のミリタリーアーカイブ」を運営中。

『ゴジラ-1.0』で焼け野原の日本に上陸したゴジラ
現代の軍事国家でもその力を発揮できる?

©2023 TOHO CO., LTD.
©2023 TOHO CO LTD

2023年暮れにスマッシュヒットを記録し、驚くべき事に北米を中心に海外でもウケまくっている怪獣映画『ゴジラ-1.0』(以下マイゴジ)。なんと2023年度のアカデミー賞特殊効果部門にノミネートされ、受賞候補作の先頭を走っているとの観測もされていて、桜の季節になっても、まだまだマイゴジ現象は続きそうな雰囲気だ。

そんなゴジラについて、本稿では、もし現在、あの「マイゴジ」のゴジラが出現したら世界はどうなってしまうのか?それを各国の安全保障という観点から考察してみたい。

敗戦日本にゴジラが現れて、復興にようやく手がかかった東京をめちゃくちゃにしていく。そんな設定がウケたマイゴジだけど、これを現代社会に置き換えてみても、大変な事態であることは容易に想像がつく。

それは当然、社会や既存の価値観を根底から変えてしまうインパクトがあるだろうけど、その全てを語るのは不可能。そこでゴジラとの対決の最前線に立つであろう軍隊と、その指示を出す国家安全保障問題に目線を絞るというわけだ。

関連する考察を始める前に、まず大前提となる条件を明確にしておきたい。これが曖昧だと「歴史のもしも」は収拾が付かなくなってしまうからだ。そこで筆者は「2024年のゴジラ問題」について次のように定義した。

1.ゴジラが上陸してくる状況に対して、アメリカ、ロシア、中国、日本の4カ国について国別に考察する。
2.各国とも世界で最初のゴジラ上陸国となる。ゴジラは基本、太平洋や大西洋、北極海など、大洋の中心部付近で生まれたものとする。
3.各国ともゴジラとのファーストコンタクトではない。マイゴジに倣うなら、重巡高雄喪失時の日本政府と等しい状況を経験している。ゴジラの大きさ、生物学的特徴、強い破壊本能と熱線攻撃力までは把握している。
4.原子力発電所や生化学兵器研究所のような各国内の危険施設の存在はここでは考慮しない。
5.上陸前の領海内でのゴジラ撃破は不可能とする。
6.ゴジラは各国の通常戦力で駆除できる。

5と6については、少々説明を要する。

マイゴジの戦後日本が、海神作戦や戦闘機震電の攻撃でゴジラの肉体的破壊に成功したことから鑑みるに、上記サンプルの4カ国が現在保有する兵器の火力であれば、ゴジラの物理的破壊は可能であるとみるべきだ。

また劇中のアメリカ政府がゴジラの移動方向を把握し、ある程度コントロールしていたと思しき描写からしても、現代の海軍力であれば、攻撃型潜水艦の魚雷攻撃や巡航ミサイルなどによって洋上で撃破できる可能性が高い。

それではこの4カ国を想定する意味がないので、何らかの事情でゴジラに本土接岸と上陸を許してしまったという状況からの考察とする。

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