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自然の要塞に包まれたロシア
ゴジラ上陸が戦争の核攻撃の口実になる場合も…

映画『ゴジラ2000 ミレニアム』の劇中写真
映画ゴジラ2000 ミレニアムの劇中写真Getty Images

ゴジラの接岸上陸を許したとしても、もっとも被害が小さな国。それがロシアだ。

まず地勢的に見て、ゴジラがロシアの重要な都市圏に直接上陸してくる可能性は限りなくゼロだ。現在、ロシアの沿岸部にあって大都市と呼べるのはサンクト・ペテルブルクくらいだが、ここはバルト海の最奥にあり、ゴジラは北海やバルト海を縦断してピンポイントで上陸しなければならないので、まず起こりそうにない。

また太平洋側にはウラジオストクがあるが、これは日本海に面しており、ゴジラが日本をスルーして到達するのはかなり難しい。残るは北極海のムルマンスクくらいだが、ここはロシア海軍と空軍の一大拠点であり、即応されてゴジラは詰む。

そうなると北極海かオホーツク海からシベリアに上陸してくるのが、ゴジラの基本的な動きとして想定される。ロシアはこれを空軍(防空軍)主体の攻撃で排除することになるだろう。

現役戦力の大半をウクライナ戦争に投入している現在、ゴジラ攻撃に振り向けられる戦力は小さいが、広大なシベリアそのものが巨大な障壁となり、ゴジラによる損害は僅少である。

さすがに北極圏の石油や天然ガス採掘基地やダイヤモンド鉱山などが破壊、汚染の対象となると、経済的には無視できない損害となるが、それも国家の屋台骨を揺るがすほどのことはない。

またシベリアに上陸した場合、ロシア国民を含む世界の大半の人間は、どのようにゴジラが処分されたか知ることはできないだろう。そこで行われることの情報はほとんど外部に出ず、それを正確に知る手段はほとんどない。

アメリカなどは偵察衛星や戦略偵察機を使って実態把握に努めるだろうが、それも現在は難しい。ゴジラがどのように倒されたのか、そしてその死骸の処分や科学的調査などが国際社会に開かれることもないだろう。

生け捕りにして生物兵器に転用。そんな突拍子もない選択肢さえ、ウソとして片付けられない怪しさが、ロシアにはある。これが欧米や中国の疑心を招き、大きな国際問題になるのは間違いないだろう。

もう一つの変則的ファクターがウクライナ戦争だ。地政学的には考えにくいが、地中海経由で黒海に入り込んできた場合、これは大変な災厄をもたらす。例えば現在ロシアの実効支配状態にあるクリミア半島や、占領下のウクライナ領に上陸してきたとすれば、ロシアはゴジラ対処を理由に戦争の質を網一段エスカレートさせてもおかしくない。戦術核使用のハードルが大きく下がるということだ。

ゴジラの上陸場所次第であるが、ウクライナ戦争へのゴジラの関与は、悲劇的な結末しか見えてこない。

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