地勢的に最弱の中国
ゴジラの攻撃が社会の大変革の引き金に!?
今回、ゴジラの上陸ターゲットとなる国の中で、もっとも苦しいのが中国だ。
まず地勢的な理由。中国の沿海部を発する海上交通路は、日本列島から台湾、フィリピン、インドネシアによって形成される「第一列島線」で蓋をされているのは有名な話。この現実を中国は安全保障上の障害と見なしていることが、東アジアの不安定な情勢の根本要因になっている。
逆を返せば、中部太平洋域を発するゴジラがこの第一列島線をかいくぐって中国に迫るには、
①台湾のその南側のフィリピンの間のバシー海峡
②台湾の北側、南西諸島一帯
このいずれかのルートしかない。
①の場合、上陸地点は香港がある広東省一帯、②の場合上海のある江蘇省・浙江省が濃厚だが、黄海~渤海方面に北上する可能性も。そうすると、首都北京の目と鼻の先に上陸する可能性があり、これは中国にとって最悪のシナリオとなる。
いずれの上陸パターンをとるにしても、人口密集地への被害は避けられない。中国経済の重要部分は、いずれも沿岸部に集中しているからだ。これに輪を掛けて事態を難しくしているのが、中国の軍事制度である。
中国は1980年代に七大軍区制度を導入したが、習近平政権下の2016年にこれを五つの「戦区」に再編した。戦区は平時には所在地の収税、軍関連のインフラ整備、警察事務、治安維持活動、学生・住民の軍国主義的教育など民生にまで広く関与した、独自性の強い組織である。
問題は、ゴジラの上陸が想定される場所が、五戦区のうち四つに該当してしまうことだ。有事の兵力移動や相互支援をスムーズに進めるための戦区導入であるが、まだ施行されてから日が浅く、これが十全に機能する可能性は低い。そうなるとゴジラ来襲への備えの社会的負担はかなり大きくなる。
また気になるのが2024年時点でかなり顕在化している中国の経済的後退である。日本のバブル崩壊など比較にならない規模の不動産業界発の不況と、先進国が進めている対中デカップリングに伴う輸出不振、地方政府の急激な財政悪化、若年層を中心とする高い失業率など、現在の中国は普通の国であれば政権がいくつ吹き飛んでもおかしくない「内憂」が蔓延している。
こうした状況になると、政権一新でリセットを図るのが中国の歴史のパターンであり、天変地異がそうした王朝交代の兆候とされるテンプレである。ゴジラの登場はそうした引き金としてうってつけだ。
もちろん初動で鮮やかにゴジラを片付けられれば、中国共産党の威信は否応なしに上がるだろう。しかし、動員が許可された各戦区の銃口が、全てゴジラに向けられていると考えるほど、中国共産党の指導層が楽観的とも思えないのである。