社会派監督オリヴァー・ストーンの“ライフワーク”
世界の歴史でも最大の「ミステリー」のひとつ、ケネディ暗殺事件。その後、数々の謎、陰謀論が都市伝説的に広がり続ける中、オリヴァー・ストーンが事件の謎に迫る大作映画『JFK』を製作する。
そして前作の1991年から時が経ち、新事実を追加する形でドキュメンタリー映画を製作したのが本作だ。
ベトナム戦争で兵役に就いた経験を基に、その悲惨さを描いた『プラトーン』(1986年)や、9・11同時多発テロをストーリーに仕立てた『ワールド・トレード・センター』(2006年)など、社会派映画の第一人者であるストーンが、ここまでケネディ暗殺の謎に迫ろうと、背中を押すものは何なのか。
単にミステリー映画の題材としてではなく、“ライフワーク”として、この問題に挑んでいる印象を受ける。
ドキュメンタリー作品らしく、ストーリー的なものは存在しない。とにかくこの事件に少しでも関わった人へのインタビューがひたすら続く。あまりにも矢継ぎ早過ぎて、観る側として、頭が追いついていくのがやっとといった感じだ。
それは、インタビューの対象は、ケネディが搬送されたパークランド記念病院で治療に携わった医師や看護師、法医学者、検視に関わった医師の元同僚、歴史学者、そして事件当日、パレード会場で惨劇を目の当たりにしたダラス市民にも渡る。
数々の証言の中で、初動の過ちが明らかとなる。テキサス州法では、テキサス州で死亡した場合の検視は州内で行うことが規定されているが、CIAはそれを無視し、遺体をワシントンに移送する。まるで、証拠を隠すかのように…。