歴史の闇に葬られた事件の真相とは
その後、事件を検証するために「ウォーレン委員会」設立される。しかし、その検証は二転三転し、その被弾痕すら特定できない杜撰さだ。
ついには同時に襲撃され重傷を負ったテキサス州知事ジョン・コナリーともども貫通した“魔法の銃弾”の存在を指摘するなど、あり得ないほどの機能不全ぶりを見せる。
今もなお、ケネディ暗殺を謎たらしめているのは、ウォーレン委員会の無能さ、そしてオズワルドの単独犯行説を押し通そうとした姿勢にあるといえるだろう。
こうして多くの事件関係者へのインタビューを重ねるものの、ストーン監督が思い描いたような真相の核心に辿り着くことはない。
しかし、それも当然だ。「CIAの中の反ケネディ派、およびケネディの政敵が暗殺に関わっていました」などと今さら言えるはずはないからだ。
仮にそんな発表をすれば、この事件は単なる殺人ではなく、クーデターとも呼べる事態となる。米国は社会不安に覆われ、治安の悪化は避けられないだろう。
事件から60年。当時、事件に関わった人々も、次々と鬼籍に入りつつある。このタイミングで本作を作った意図として「証言を記録し、事件を風化させない」ことが主な目的だろう。
あくまでも、“社会派ドラマ”として制作された1991年版の『JFK』から、さらに踏み込んだ内容で、米国の暗黒の歴史に挑んだ本作。ドキュメンタリーとしてだけではなく、記録映画としての役割も十分に果たしている一作だ。
(文・寺島武志)
11月17日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開
【作品概要】
タイトル:『JFK/新証言 知られざる陰謀 劇場版』
監督/出演:オリヴァー・ストーン(『JFK』、『プラトーン』、『7月4日に生まれて』)
原題:JFK Revisited: Through the Looking Glass
プロデューサー:ロブ・ウィルソン
ナレーター:ウーピー・ゴールドバーグ、ドナルド・サザーランド
脚本:ジェームズ・ディユジニオ
撮影:ロバート・リチャードソン
音楽:ジェフ・ビール
編集:カート・マッティラ
配給:STAR CHANNEL MOVIES
© 2021 Camelot Productions, Inc. All rights reserved.
Photo: John F. Kennedy Presidential Library, National Archives
2021年/アメリカ/118分/カラー/1.77 16×9/5.1ch/英語/G/字幕翻訳:加藤亜弓
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@starchannel #JFK 新証言