『カラオケ行こ!』の落語的な展開
その後の展開は、『タイガー&ドラゴン』でいう「粗忽長屋の回」だ。「粗忽長屋」は、自分が死んだことに気づかない粗忽者が自分の遺体を引き取りにいく古典落語で、死体を発見した熊五郎はまさに聡実くん。
事故現場で死体を見た狂児が、スナックに元気な姿で現れるのだから、あの驚きも無理はない。まさに「ここにいるのはまさしく狂児だが、腕をぶらんとさせて運ばれていた狂児は一体誰なんだい」な状態。
ちなみにドラマ内で、死体を替え玉にして去って行くヤクザを怪演している人物こそ、組長役・北村一輝だ。
また、今作には「まんじゅう怖い作戦」なるワードも登場する。カラオケ大会の罰ゲームは、組長の手彫りによる「嫌いな物の刺青」。
それにビビる狂児に、聡実くんは「逆に、組長さんの前で好きなもんを嫌い嫌いと言い続けてみたらどうやろ」と提案する。そして、このフリはエンドロール明けに見事に回収される。おかしくも感動的な「サゲ」を、ぜひ映画館で味わっていただきたい。