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映画オリジナルアイテム「音叉」が暗示する未来

©2024『カラオケ行こ!』製作委員会
©2024カラオケ行こ製作委員会

映画『カラオケ行こ!』には、カラフルな亀柄の傘、VHSを壊れかけの再生機で観る「映画を見る部」、合唱部の憎めない後輩・和田(後聖人)など、全1巻の原作マンガを107分の映画にするにあたって、足された映画オリジナル要素が多数存在する。

その中でも印象的なアイテムが、音程を確認するために使われる音響器具の「音叉」だ。

「音の高さは上下やなく、振動です。音叉はラの音って決まってて、これは440ヘルツ。つまり1秒間に440回振動してるということです」

音叉の存在を聡実くんから教わった狂児は、すぐさま購入する。「紅」の日本語訳をノートに書く聡実くんの目の前で、音叉を油性ペンで虎柄にデコっている狂児はなんともチャーミングだった。この「虎模様の音叉」は「狂児と聡実くん」の象徴だ。

「音叉」は合唱部部長の聡実くんで、「虎柄」にはヤクザの狂児のセンスが詰まっている。

さらに、音叉は聡実くんと狂児が歩む道も示している。Y字路のように別れる音叉。道の片方は、聡実くんが歩む大学に通って就職をするという定番ルートで、もう片方の道は狂児が突き進む極道だ。

カラオケボックスで同じ時間を過ごした二人は、二度と交わらないように思える道をそれぞれに歩み出す。道は違っても空気は同じ。音叉は空気の振動で、離れていても共鳴し合う。離れ離れの狂児と聡実くんだが、同じ空で繋がっている。

3年後、祭林組やスナックを潰して建設中の巨大なホテルを見上げる狂児の背中。二人の新たな交わりの気配を見せて、『カラオケ行こ!』の物語は幕を閉じる。

最後に、主人公の聡実くんが「紅」をそうしたように、『タイガー&ドラゴン』の主題歌「UTAO-UTAO」(V6)の歌詞を改めて読んでみる。

「いつの間にか変わりゆく街並/(中略)/想像以上の未来へ/相当ハードなway越え/クセになるね 僕ら出会えた奇跡とか/広がる無限の宇宙/もうどうしようもない気分さ/いつの日にか 愛に届く utao-utao」

カラオケ行こ!

(文・前田知礼)

【作品情報】
原作:和山やま(ビームコミックス/KADOKAWA 刊)
監督:山下敦弘 脚本:野木亜紀子
出演:綾野 剛、齋藤 潤、芳根京子、橋本じゅん、やべきょうすけ、吉永秀平、チャンス大城、RED RICE(湘南乃風)、八木美樹、後 聖人、井澤 徹、岡部ひろき、米村亮太朗、坂井真紀、宮崎吐夢、ヒコロヒー/加藤雅也(友情出演)北村一輝
制作・配給:KADOKAWA
公開日:2024年1月
©2024『カラオケ行こ!』製作委員会
©和山やま/KADOKAWA
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