ネイティブアメリカンの描写にみるアリ・アスターからの影響
音楽も素晴らしい。スコセッシ監督は音楽ドキュメンタリーも多く作っているが、その選曲と音の出し方、響かせ方も見事だ。
さらに、これがスコセッシ映画ということを印象付けるのは、新旧の盟友の競演だ。“旧盟友”であるロバート・デ・ニーロはオセージ族の理解者として接しながら、裏では利権を奪おうと陰謀を重ねるウィリアム・ヘイルを演じる。その甥のアーネスト・バークハート役は、“シン盟友“”レオナルド・ディカプリオだ。
冒頭、戦地から帰ってきたばかりのピュアで粗野なアーネストと、柔和な笑顔の奥に悪徳が染み出すようなウィリアム叔父さんの会話のシーンだけで、2人のキャラクターがしっかり伝わってくる。
やがてアーネストは、オセージ族のモリーと惹かれ合い、結婚する。オセージ族の人々は石油による利益の受益権を持っており、これを狙った白人たちによる殺人事件が頻発。モリーの親族たちも、次々と不審死を遂げていくことになる。
生と死が続くなかで、オセージ族の風習もじっくり描かれる。いまどき、これを奇異に感じるだけでもポリコレに引っかかってしまいそうなので感想を飲み込んでしまいそうになるが、スコセッシ監督も『ミッドサマー』を意識して撮ったとコメントしているので、ここは素直に受け止めてもいいのだろう。とにかく映像としての強度があるため、観ていて時間を経つのを忘れる。