ホーム » 投稿 » 海外映画 » 劇場公開作品 » 「捨てること」と「拾うこと」をめぐる極上のメロドラマ。映画『枯れ葉』徹底考察&評価。アキ・カウリスマキ最新作レビュー » Page 4

戦争や貧困が絶えない現実に光を灯す

映画『枯れ葉』
© Sputnik

 「捨てる」ことを合図として、これ以降またもすれ違う二人がいかに再会するのかについては、ここでは具体的には書かずにおく。だが、映画後半の二人の関係性は、彼らがそれぞれ意識的に何かを「拾い」、「捨てる」ことを契機として決定的に動き出すという事実は強調しておきたい。

 ある日アンサは、スーパーで廃棄される食品と同様、このままだと殺処分されてしまうという犬を見かけると、その犬を「拾って」飼いはじめる。対してホラッパは、大きな決意とともにあるものを意識的に「捨て去り」、その後最終的に他の人物が「捨てた」衣服を身に纏うこととなる。

 社会から半ば「捨てられた」と言っていい中年の二人は、「捨てること」と「拾うこと」を繰り返すなかで、最終的に幸福な結末へと至る。戦争や貧困が絶えることのない、こんな世の中もまだまだ「捨てた」ものではない。ほんのわずかな間だけ豊かに色づき、輝いた後で打ち捨てられたかのような「枯れ葉」を踏みしめながら画面奥へと歩み去る二人と一匹の姿は、束の間とはいえそう信じさせてくれる愛と希望に満ちている。

(文・冨塚亮平)

【作品情報】
題名:『枯れ葉』
監督・脚本:アキ・カウリスマキ/撮影:ティモ・サルミネン
出演:アルマ・ポウスティ、ユッシ・ヴァタネン、ヤンネ・フーティアイネン、ヌップ・コイヴ
第76回カンヌ国際映画祭審査員賞
2023年国際批評家連盟賞年間グランプリ
2023年/フィンランド・ドイツ/81分/1.85:1/ドルビー・デジタル5.1ch/DCP
フィンランド語/原題『KUOLLEET LEHDET』/英語題『FALLEN LEAVES』
配給:ユーロスペース 提供:ユーロスペース、キングレコード
© Sputnik
公式サイト

1 2 3 4 5
error: Content is protected !!