緊張感をあおるシンギング・ボールの音色―音楽の魅力
本作では、イーサン・コーエンのアイデアで、エンディング以外でほとんど音が使われていない。これは、「おどろおどろしい音楽でいかに観客を怖がらせるか」がカギとなるサスペンススリラーでは実に異例だ。
音響編集を担当したスキップ・リーヴセイによると、こういった考えは、「音楽を使ってしまうと先の展開が読めてしまうから」だという。音楽という物語のガイドを撤廃することで、ただならぬ緊張感を演出し、恐怖を盛り上げることができるのだ。
また、エンディングテーマもシンギング・ボール(仏教徒が瞑想時に使用する鈴)の持続音のみを使ったシンプルかつミニマルなもので、音楽というよりはほとんど「音」といって差し支えないものだ。
なお、エンディングテーマを担当したのは『ブラッド・シンプル』(1984)以来全てのコーエン兄弟の作品の音楽を担当してきたカーター・バーウェル。彼は、バイオリンやパーカッションなどの抽象的な音も検討したものの、最終的に無音状態の緊張感を崩してしまうとのことから、楽器を厳選したのだという。
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