視覚と聴覚に訴えかける映画ならではの魅力
『オペラ座の怪人』は、音楽と物語が深く結びついており、天才作曲家、アンドリュー・ロイド=ウェバーによる映画版ならではの仕掛けも堪能したいところ。精鋭揃いの大編成のオーケストラとコーラス、そこにロックのリズムが加わり珠玉の音楽が紡がれていく。
さらに音楽だけでなく、豪華なセットや衣装などビジュアル面も充実している。スワロフスキー社製のシャンデリアを筆頭に、美しい女性の彫像など画面の至るところに見どころがある。
本作で使用された巨大なオペラ座のセットは900人を収容する観客席、舞台、広間、楽屋、衣裳室、厩舎まである。また、オペラ座の地下は水に浸されており、鬱屈した内面の持ち主であるファントムの隠れ家に相応しい雰囲気を形作っている。オペラ座の暗い地下はファントムの複雑な心を可視化しているようだ。
衣裳も豪華そのもの。映画『オペラ座の怪人』には、オペラ、バレエ、仮面舞踏会のシーンがあり、衣装のバリエーションが非常に多い。大勢のキャストが舞う「マスカレード」のシーンでは、白、黒、金、銀で色調が統一されており、ダイナミックかつ統制のとれた視覚表現に圧倒される。
本作では随所に舞台版とは異なるアレンジが加えられているが、本質は変わりなく、小説のエッセンスも受け継いでいる。クライマックスの始まりを象徴するシャンデリアが落下する衝撃的なシーンの撮影では、念入りな準備のもと、実際にシャンデリアを落下させることで、舞台では味わえない緊迫した瞬間を形作ることに成功している。