ホーム » 投稿 » 海外映画 » 劇場公開作品 » リアルな動きに見入ってしまう… 「キングコング」シリーズにはない美点とは? 映画『猿の惑星/キングダム』徹底考察&評価 » Page 2

舞台は人類と争ったシーザーの死後300年ー。

『猿の惑星/キングダム』
C2024 20th Century Studios All Rights Reserved

薬によって進化を遂げ、エイプたちのリーダーとなって人類と争ったシーザーが死んで300年後。文明は後退したが、地球はエイプが支配する世界となっている。その辺境のちいさな村で生まれ育った若いチンパンジーのノアは、幼馴染と共に村の伝統儀式の準備を進めていた。そこに、海の近くで”王国“を築いている、独裁者プロキシマスの軍団が襲撃。村は燃やされ、ノアの家族や仲間たちは連れ去られてしまう…。

序盤はノアが暮らす村を中心とした生活が丹念に描かれていく。精巧なCGで描かれたエイプたちの表情や、リアルな動きは思わず見入ってしまうが、この珍しい種族の文化や習慣を覗き見ているような感覚は『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(2022)を思い出す。そして、猿同士の動物的な争いは超実写版『ライオンキング』(2019)のようなテイストで、まるで動物ドキュメントのような雰囲気だ。

ただ、登場するエイプたちはそれぞれ個性豊かに描かれてはいるのだが、見分けがつきにくいのも確か。さらに、その猿っぽい動きや表情はイラっとするくらいリアルで、いろいろと戸惑っているうちに話は進んでいく。

この時代において人間は絶滅寸前なのだが、まだわずかに生き残っている。しかし、知能が低下して言葉も話せないので、エイプに比べて下等な生き物とされている。そんな設定なら、人間とはいえ裸で歩きまわってそうだが、なぜか全員が布を着用し、大事な部分を隠している。「毛がないので寒がり」などと理由を付けてはいるのだが、その服はどこから供給されているのだろうか…。

無粋なツッコミであることはわかる。全年齢が観る映画として、裸は出せないのだろう。ただ、ちょっと「ん?」という違和感がある。リアリティという点では、原人に近づくために、文字通り役者がひと肌脱いだ映画『北京原人Who Are You』(1997)のほうが覚悟があった。

1 2 3 4 5
error: Content is protected !!