インディペンデント映画の金字塔—演出の魅力
『パルプ・フィクション』(1994)や『キル・ビル Vol.1』(2003)など、バイオレンス表現で名を馳せるクエンティン・タランティーノ。そんな鬼才の長編デビュー作が、この『レザボア・ドッグス』だ。
1992年の公開当時はトロント国際映画祭の最優秀作品賞をはじめ、数多くの賞を受賞。2005年に「Empire」が発表した「インディペンデント映画ベスト50」では堂々の1位に輝くなど、インディペンデント映画史における最重要作とみなされている。
本作の最大の特徴は、なんといってもプロットの見事さにある。あらすじからも分かるように、本作は、強盗が失敗した後からはじまる。そして、それぞれの登場人物の回想を通して、強盗の顛末が掘り下げられていく。こうした物語の構成は、今の時代ありふれたものだが、公開当時は極めて斬新だった。
主人公たちが交わす下世話なムダ話も絶妙なスパイスになっている。例えば強盗前のシーンでは、マドンナが歌う「ライク・ア・ヴァージン」の歌詞をめぐり、ミスター・ホワイトたちが議論を交わす。こういった会話は一見本筋に関係のないものに思えるが、登場人物のキャラクターを表現する意味では極めて重要なファクターとなっている。
ちなみに、本作のタイトルである「レザボア・ドッグス(Reservoir Dogs)」について、タランティーノは「雰囲気で決めたタイトル」であると述べるにとどめ、本当の意味については明らかにしていない。しかし、「Reservoir」が「貯水池」や「貯蔵庫」を意味することから、「吹き溜まりの犬たち」「掃きだめの犬たち」という訳がふさわしいと思われる。