ハーヴェイ・カイテルとの運命の出会い—配役の魅力
本作を語る上で外せない人物が、主人公ミスター・ホワイトを演じるハーヴェイ・カイテルだ。
タランティーノによれば、元々自主制作のインディーズ映画として作る予定だったという本作。しかし、その脚本が友人のローレンス・ベンダーを起点にわらしべ長者のように伝わり、最終的にハーヴェイ・カイテルの目に留まった。若手監督への援助を積極的に行っていたカイテルは、本作の脚本をいたく気に入り、自ら出演とプロデュースを買って出たという。
更に彼は、タランティーノに経費を援助し、自らニューヨークでのオーディションに同行。ミスター・ブロンド役のマイケル・マドセンやミスター・ピンク役のスティーブ・ブシェミといった一筋縄ではいかない大物たちが次々と参加し、オーディションは白熱したという。20代半ばまでビデオショップの店員として働き、チャンスがくるのをじっと待っていたタランティーノ。彼のその後の栄光は、カイテルの慧眼がきっかけとなっているのだ。
なお、余談だが、実はカイテルは主演を務める予定だった『地獄の黙示録』の主演を2週間で降板しており、10年以上に渡りハリウッドから干されていた(代役はショーン・シーン)。しかし、『レザボア・ドッグス』への出演により、彼はハリウッド俳優としての地位を完全に復権している。つまり、本作は、タランティーノのみならず、カイテルの運命も大きく変えたのだ。