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リアリティショーを通じたメディア批判〜演出の魅力

ピーター・ウィアー監督
ピーターウィアー監督Getty Images

この世界は実は作り込まれたセットで、周りにいる人はただのエキストラなのではないかー。子どもの頃、そんな妄想を抱いた人もいるのではないだろうか。そんな妄想を形にしたのが、この『トゥルーマンショー』である。

本作は、1998年公開のSF映画。監督は『刑事ジョン・ブック 目撃者』(1985年)のピーター・ウィアー。主演のトゥルーマンを『マスク』(1994年)『イエスマン “YES”は人生のパスワード』(2008年)のジム・キャリーが演じている。

本作の特徴は、一言で言えばリアリティショーだろう。リアリティショーとは、状況のみを設定し、台本なしで、出演者の反応や人間関係などを見せるもので、近年では『オオカミくんは騙されない』(Abema TV、2017年〜)などの恋愛バラエティ番組や『山田孝之の東京都北区赤羽』(2015年)などのモキュメンタリー番組、『水曜日のダウンタウン』(2013年〜)などのドッキリ番組が知られる。

本作の主人公トゥルーマンは、「シーヘブン」と呼ばれる人工島で生まれ育ち、これまで順風満帆な生活を送ってきた。しかし、彼の人生は、島中に張り巡らされた数千台のカメラを通して、「リアリティショー」として島の外の視聴者に届けられている。

自分の人生がカメラによって映し撮られ、不特定多数の人々に観られているのではないか。そのような妄想に囚われる人は現実にも存在し、非公式ではあるがトゥルーマン症候群(トゥルーマン・ショー妄想)と呼ばれている。

劇中には細かい仕掛けが豊富にあり、何度観ても楽しめる。例えば、トゥルーマンと妻・メリルの結婚式の写真が映るカットでは、なぜかメリルが人差し指と中指をクロスさせている。このハンドサインは、英語圏では「幸運を祈る」という意味を表す場合もあれば、「嘘をつきました。神様許してください」といった意味を表すケースもある。

メリルはトゥルーマンを愛しているわけではなく、あくまで役に徹することで彼と結婚した。フィンガーサインには、嘘をついて神様に懺悔している彼女の本心が表現されているのだ。

日常の一挙手一投足が、数万人の人の目に晒され続けるー。トゥルーマンの「檻の中の人生」は、どんなホラー映画よりも恐ろしく感じられる。しかし、SNSが浸透した今日では、こういった「相互監視」はすでに実装されているとも言える。そういった意味で、本作品は今日の高度情報社会を予見した作品とも言えるだろう。

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