格調高いマーラーの名曲ー音楽の魅力
本作では、マーラーをはじめとしたクラシックの名曲が用いられている。
最も著名なのが、マーラーの交響曲第5番第4楽章の「アダージェット」だろう。生や死といった重いテーマが並ぶ交響曲第5番の中で、愛を描いたこの曲は、ハープと弦楽器のみで演奏された楽曲で、本作のテーマ曲にぴったりの作品に仕上がっている。
なお、本曲は、マーラーが出会うなり恋に落ち、結婚に至った運命の女性アルマに宛てたラブレターであるとされており、タジオに恋焦がれるアッシェンバッハの思いを巧みに表現している。
また、アッシェンバッハとアルフリートの芸術談義のシーンでアルフリートがピアノで演奏するのは、マーラーの交響曲第4番第4楽章。
本曲は、食べ物や喜びに満ちた天界の素晴らしさを歌っており、2人が探求する美を表現しているようにも解釈できるだろう。
そして、閑散とした砂浜で女性が1人歌う曲は、19世紀ロシアの作曲家モデスト・ムソルグスキーによる歌曲集『死の歌と踊り』の第1曲「子守歌」だ。
本曲は、詩人のゴレニシチェフ・クトゥーゾフの詩がモチーフになっており、忍び寄る死が病床の幼児の命を奪っていくという内容が描かれている。
本曲は、その後のアッシェンバッハの死を暗示した曲と言えるだろう。
なお、本作では、このほかベートーヴェンの「エリーゼのために」をはじめ、クラシックの楽曲が効果的に用いられている。気になった方は曲名を調べてみるといいだろう。
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