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マルチバースに響き渡る神秘的なメロディ―音楽の魅力

ステファニー・スーとデイヴィッド・バーン、サン・ラックスの面々【Getty Images】
ステファニースーとデイヴィッドバーンサンラックスの面々Getty Images

本作の音楽を担当しているのは、サン・ラックス。音楽プロデューサーのライアン・ロットをはじめとする3人組の音楽グループだ。

彼らが本作に提供した音楽は、胡弓を思わせるストリングスの伸びやかな音色を基調としており、どこかアジアンな雰囲気を醸し出す神秘的で幻想的な楽曲になっている。

オープニングでエヴリンが経費精算に追われるシーンで流れる「Very Busy」は、時計の秒針を思わせるストリングスのピチカート音を背景に、神経を逆なでするような日常音があちこちに散りばめられ、日常の雑事と時間に追われるエヴリンの心境を巧みに表現している。

エヴリンがディアドラに告白するシーンで流れる「I Love You」は、広大なストリングスの音色をバックに、「I Love You」という女性コーラスの美しいリフレインが加わりどこか神々しい雰囲気を醸し出しており、複数のユニバースが反復するマルチバースの世界観を表現している。

また、指がソーセージになった世界のディアドラが演奏する音楽は、クロード・ドビュッシーの「月の光」。足でピアノを弾くというシュールさやアクションの激しさとの対比により、かなり印象的なシーンになっている。

そして、エンディングで流れる音楽は、「This is A Life」。神々しいコーラスからはじまり、弦楽器のピチカートに女性ボーカルと男性ボーカルが重なる本曲は、自身の人生を全行程する曲の歌詞も相まって、神々しさすら感じられる楽曲に仕上がっている。

エンディングテーマを担当しているのは、ニューヨークを拠点とする日系アメリカ人シンガーソングライターのmitskiとイギリスのロックバンド、トーキング・ヘッズで知られるデヴィッド・バーンで、本曲はアカデミー賞歌曲賞にノミネートされている。

なお、本作のサウンドトラックは40曲以上あり、作中で劇伴音楽とアクションがシンクロする形で物語が進行していく。このあたりの演出は、MV監督出身として知られるダニエルズの面目躍如といったところだろう。

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