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疾走感の中で浮かび上がる暴力ー映像の魅力

ミヒャエル・バルハウス
撮影監督のミヒャエルバルハウスGetty Images

「馬に乗っているような感覚」。本作の編集を手がけたセルマがこう語るように、本作の映像は、全編が予告編とも言えるような疾走感に満ちあふれている。

そんな疾走感が全開になったパートがラストのヘンリーの逃走シーンだ。薬物の幻覚からヘリが追ってきていると錯覚するヘンリーを軸としたこのシーンでは、「車でヘリから逃げる」「家でカツレツを揚げる」といった断片的なカットが撮影され、編集室ではじめて組み合わされたという。物語展開を無視したインパクトのあるシーケンスの連なりこそ、本作の醍醐味といえるだろう。

なお、本作では、疾走感を盛り上げるため、実験的で遊び心あふれるカメラワークが随所に用いられている。例えば、先のシーンでは、カツレツを仕込むヘンリーがヘリの気配に気づくカットがなぜかサイズを変えて2度繰り返されている。こういったジャンプカットはトミーが店員を殺害するシーンなどでも散見され、本作の躍動感を高めるのに貢献している。

また、本作を語る上で外せないのが、ヘンリーがカレンを連れてレストランの裏口を抜けるシーンだろう。映画学校の教材に用いられることも多いこのシーンでは、車を停めてエントランスから厨房に回り、会場の席に着くまでのおよそ3分のシークエンスが流れるようなワンカットで撮影されており、この世の春を謳歌するヘンリーを巧みに表現している。

そして、こういった疾走感から浮かび上がるのが観客を圧倒する暴力だ。撮影を担当したミヒャエル・バルハウスは、ヘンリーがカレンの隣人を殴るシーンを引き合いに、「これほど暴力的なシーンは撮ったことがない。カットも特別な演出もない。暴力そのものを肌身で感じる」と語っている。

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