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『生きる』【ネタバレあり】あらすじ

黒澤明
黒澤明Getty Images

夜の街をあてどなく歩きまわる渡辺は、飲み屋で出会った小説家に連れられ、パチンコやダンスホール、ストリップ小屋などをめぐる。束の間、気が晴れるたものの、すぐに虚しい気持ちに駆られ、帰宅。何も知らない家族からは白い目で見られるのだった。

次の日、渡辺は部下の小田切とよ(小田切みき)と偶然に行き交う。彼女は市役所を辞める腹づもりであった。渡辺は彼女と食事を共にし、その自由な価値観、旺盛なバイタリティに触れることで、活力を取り戻していく。

その後、市役所を辞めたとよは、玩具会社の工場内作業員に転職。渡辺は自身が胃癌を患っていることをとよに告白したところ、「あなたも何か作ってみたら」と前向きな言葉をかけられる。

とよの言葉に心を動かされた渡辺は「まだ出来ることがある」と気づき、次の日市役所に復帰する。

5か月後、渡辺は病死。通夜の席では、同僚たちが、役所に復帰したあとの渡辺の様子を語りだす。

渡辺は復帰後、生まれ変わったように精力的に働き、住民の要望だった公園建設に全力を傾ける。市民のことを考えない市役所のお偉方を粘り強く説得し、暴力団員から脅迫を受けても屈せず、ついに目標を達成する。

そして渡辺は、雪の降る夜、完成した公園のブランコに揺られて息を引き取ったのだった。

通夜では、渡辺のことを疎んでいる市役所の幹部たちが、彼の悪口を言い合っている。そんな中、新しく建設された公園の近くに住む人々が弔問に訪れ、渡辺の遺影の前で涙ながらに感謝の言葉を口にする。

居心地の悪くなった幹部たちはいそいそとその場を去る。渡辺の同僚たちは堰を切ったように、「お役所仕事」への不満を吐露し、渡辺がやり遂げた功績を讃えると、今まで自分たちが行ってきた仕事のやり方が間違っていたと悟る。

通夜の翌日。市役所では、通夜の席で渡辺を讃えていた同僚たちが新しい課長の下、相変わらずの「お役所仕事」を続けている。しかし、渡辺の創った新しい公園は、子供たちの笑い声で溢れていた。

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