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ぞっとするほど美しい「ゴンドラの唄」ー音楽の魅力

監督の黒澤明【Getty Images】
黒澤明監督Getty Images

本作の音楽といえば、なにより志村の歌う「ゴンドラの唄」を挙げなければならない。今際の際の渡辺が完成した公園のブランコに揺られながら「命短し、恋せよ乙女」と口ずさむシーンは、今なお映画史に残る名シーンとして語り継がれている。

なお、黒澤は、このシーンの演出にあたり、渡辺に「この世のものとは思えない声で歌ってほしい」と注文していたとのこと。演技指導の甲斐もあって、洞穴から響くようなぞっとする歌声が耳に残るシーンになっている。

また、本作では、先述の「ハッピーバースデートゥーユー」をはじめ、全体的にカラッと明るい音楽が散りばめられている。例えば渡辺と小田切が喫茶店のシーンで流れる音楽は、バイオリンとピアノが印象的な「踊る人形」と、「おもちゃの兵隊の観兵式」だ。こういった音楽は、死に臨む志村の孤独をより際立たせるものになっている。

なお、喫茶店のシーンで流れる「ハッピーバースデートゥーユー」の音楽はその後、小田切の言葉に感化された渡辺が市役所に戻り、汚水溜めの公園化計画を決意するシーンでも流れる。この演出は、渡辺が死を前に「生まれ変わった」ことを表現していると考えるのが妥当だろう。

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