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制作陣がとった『ゲーム・オブ・スローンズ』的手法

© TENCENT TECHNOLOGY BEIJING CO., LTD.
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 原作の主要な人物をこのようにドラマ序盤から複数配置した理由は、本作を手がけたデヴィッド・ベニオフ&D・B・ワイスによるところが大きい。二人は『ゲーム・オブ・スローンズ』の製作総指揮で知られ、多数登場するキャラクターそれぞれの物語を一話の中で素早く切り替えながら描くことでスピーディーな群像ドラマとしてのフォーマットを確立している。

 もちろんその手法は『三体』でも同様で、どちらかと言うとそうしたドラマ演出を行うために主人公を増やしたり同時に登場させたりしたのだと思えなくもない。最近ではNHKの大河ドラマ『鎌倉殿の十三人』でも『ゲーム・オブ・スローンズ』を意識した構成が見られほど、この群像劇のドラマ演出は一般化している。

 ビジュアル面では原作でも印象的な冒頭の文化大革命のシーンは圧巻であった。原作を読みながら頭の中に描いたシーンが同じビジュアルで映し出されるのはさすがNetflixというほかはない。またナノテクノロジーを使用したパナマ運河でのシーンでは映像のスケールとおぞましさが衝撃的だった。

 しかし原作序盤の重要な場面であった「三体VR」は意外にもあっさり描かれており、原作でのSF的なケレン味が存分に味わえる部分が削がれていたのは残念なところである。

 そして肝心のストーリー部分は、ベースこそ原作と同じではあるものの、原作を解体して再構築したと言っても過言ではないほどかなりの改変されている。物語での主なプロットの着地点は同じなのだが、それに至るまでの過程はかなり違った印象を受ける。とはいえ、それらは原作を読んだ人間にしか気にならない部分だろう。

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