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WOWOW版に比べると…どちらが面白い? Netflix『三体』徹底考察&評価レビュー【映画と本のモンタージュ】

映画から受け取った感動を全く別の体験に繋げることで、人生はより豊かになる。本コラムでは、ライターでブックレビュアーのすずきたけしさんが、話題の映画のレビューと共に作品理解が深まる本を紹介。“本のプロ”の視点から映画と書籍を繋げ、双方の魅力を引き出す。今回は、Netflixドラマ『三体』を考察。(文・すずきたけし)

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【著者・すずきたけし プロフィール】

ライター。『本の雑誌』、文春オンライン、ダ・ヴィンチweb、リアルサウンドブックにブックレビューやインタビューを寄稿。元書店員。書店と併設のミニシアターの運営などを経て現在に至る。

SFファンの心を掴んだ小説『三体』の魅力

© TENCENT TECHNOLOGY BEIJING CO., LTD.
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 劉慈欣(りゅう じきん)によるSF小説『三体』を原作とした実写ドラマがNetflixで配信が始まった。原作小説は英語版が100万部のミリオンセラーとなり、全世界では2900万部というメガヒット小説。日本国内でも中国発のSF小説としての珍しさもあり、日本語版全三部作や外伝など累計87万部のベストセラーとなった。

 タイトルの『三体』とは「引力によって作用しあう三つの天体運動は予測が不可能」という古典力学の「三体問題」から来ている(英語版タイトルはそのものズバリ「three body problem」)。

 物語は、中国の文化大革命で父を紅衛兵の実の妹に殺され家族を失った天体物理学者の葉文潔(イエ・ウンジエ)が、絶望とともに宇宙に発信したメッセージが地球の文明と人類を脅かす事態に発展していく。

 小説『三体』の魅力は、宇宙という空間と数百年という時間軸で繰り広げられるスケールの壮大さ、そして突拍子もない仕掛けと謎である。なかば強引なまでの物語展開は、現代の先鋭化したSF作品群のなかでは懐かしさすら感じるほどで、純粋な娯楽作品としてのケレン味に満ちている。

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