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原作に忠実に描かれた中国実写版がスゴい

© TENCENT TECHNOLOGY BEIJING CO., LTD.
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 さて、実は『三体』の実写化はNetflixが初めてではない。中国のテンセントが製作した実写ドラマ『三体』(日本ではWOWOWやU-NEXTで放映)がすでにある。

 こちらは全30話と長いものの、原作の日本語版訳者である大森望氏も翻訳の際にはドラマ版を参考にしたというほど原作にほぼ忠実に描かれている。

 シリアスな雰囲気のNetflix版と比べてコミカルなシーンもあり、また「三体VR」のシーンはこのテンセント版のほうが出来が良い。すでに原作を読んだ人にはまずはこちらからをオススメしたいほどである。

 ここまで原作とドラマの大きな違いなどを述べてきたが、実のところ『三体』シリーズの第一作は長い序章なのである。宇宙的、時間的に壮大なスケールで物語が動き出し(宇宙艦隊とか出てくる!)、本当に面白くなるのは原作第二作『黒暗森林』からなのだ。つまり、Netflix版のドラマが面白くなるのは第2シーズンからなのである(たぶん)。

 ドラマではベネディクト・ウォン演じる捜査官のダーシーが科学者の自殺現場を見て「Christ!」と、驚く場面がある。『三体』では“主”の存在がとても重要な意味を持つが、このキリストを意味する「Christ!」という言葉をアジア系のキャラクターが発することにNetflix版『三体』の欧米的な視点を感じずにはいられない。

 もとは中国を舞台にした中国人作家による中国のSF小説が原作の『三体』が、Netflix製作陣による欧米的な視点により宗教観や死生観がどのように描かれているのか、細かいセリフに注意を払って観るのも面白いかもしれない。

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