何を伝えたい? 哲学的なセリフを徹底考察。映画『ソウルフル・ワールド』レビュー&評価。公開中止を乗り越えた傑作を解説
text by 唐梨
第93回アカデミー賞の長編アニメ映画賞を受賞した映画『ソウルフル・ワールド』が4月12日より公開。生まれる前の世界を舞台として、人生の幸福(「きらめき」)について描き、ピクサー史上一番深いとSNSで話題となった。今回は、人生の幸せの感じ方について深く考察していく。(文・唐梨)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】
美麗なアニメーションと深いメッセージ性
『ソウルフル・ワールド』は、ピクサー・アニメーション・スタジオ製作による、アメリカのアニメーション映画だ。実は約4年前の2020年にDisney+で配信されており、第93回アカデミー賞の長編アニメ映画賞を受賞した映画でもある。
というのも、元々は劇場公開予定であったところを、新型コロナウイルスの影響で断念したためだ。その後、満を持して2024年4月12日にようやく映画館にて公開される運びとなった。
映画の舞台は、生まれる前に「どんな自分になるか」決めることができる魂(作中では「ソウル」と呼ばれている)の世界。そこへ、ニューヨークでジャズ・ピアニストになることを夢見る音楽教師のジョーが迷い込み、人間界に行きたがらないソウルの22番と知り合うことで、物語が始まる。
ピクサーはいつも安定して美しいアニメーションで有名だが、今回も例外ではない。登場人物たちの細やかな動きはもちろん、生まれる前のソウルの世界という検証しようのない架空の舞台も「本当に私たちはこんな世界を通って生まれてきたのかもしれない」と思わせるほどきめ細やかに描かれている。
そして舞台設定の通り、この作品には「私たちは生まれる前に何をしていたのか」「何のために生まれてきたのか」という深いメッセージ性が込められている。約4年前の作品ではあるものの、いつの時代にも通じる普遍的なテーマを描いている作品だ。