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「きらめき」は生きる意味ではない

(C)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
C2024 DisneyPixar All Rights Reserved

一方のジョーも、22番との関わりを通じて、ジャズ・ピアニストの夢が叶ってしまった後の虚無感から立ち直っていく。それを象徴するのが、作中の「きらめきは生きる意味ではない」(意訳)というセリフだ。

「きらめき」は固定されたものではなく、流動的なものであり、すぐに過ぎ去ってしまう。しかし、だからと言って、二度と他の「きらめき」がやって来ないわけではない。また、渋々と取り組んだことに、偶発的に「きらめき」を見つけることだってあるだろう。

人生の幸福は、「きらめき」を見つける瞬間に限られているわけではない。見つけた後に次の「きらめき」を見つけるまでの時間や、一度見つけたものを維持する時間、それらに囚われず過ごす時間もまた幸福と呼べる。「きらめき」が連綿と続く人生は稀で、我々が過ごすほとんどの時間は「きらめき」とは無縁の平凡な瞬間から成り立っている。しかし、そうした平凡な一瞬一瞬も自分の心持ち次第で幸福だと感じることができるのではないか。

月並みな表現だが、未来は今の連続であり、毎日を丁寧に生きる積み重ねが、人生の質を上げていく。そんな当たり前だが、つい忘れてしまいがちなことを、美しいアニメーションを通して伝えてくれたのが『ソウルフル・ワールド』だった。老若男女問わず、ぜひ映画館に見に行ってほしい。

(文・唐梨)

【作品情報】
タイトル:『ソウルフル・ワールド』
監督:ピート・ドクター
脚本:ピート・ドクター、マイク・ジョーンズ、ケンプ・パワーズ
出演:ジェイミー・フォックス、ティナ・フェイ、グレアム・ノートン、レイチェル・ハウス、アリシー・ブラガ、リチャード・アイオアディ、フィリシア・ラシャド、クエストラブ、アンジェラ・バセッド、マーゴ・ホール、ダビード・ディグス、ローデッサ・ジョーンズ、ウェス・ステューディ、サキナ・ジャフリー
日本語吹き替え:浜野謙太、川栄李奈
製作総指揮:ダン・スキャンロン、キリ・ハート
原案:ピート・ドクター、マイク・ジョーンズ、ケンプ・パワーズ
制作:ダナ・マーレイ
編集:ケビン・ノルティング
音楽:トレント・レズナー アティカス・ロス
音楽(ジャズ楽曲):ジョン・バティステ
日本版エンドソング:JUJU 「奇跡を望むなら…」
2020年製作/101分/アメリカ/原題:Soul
配給表記:ウォルト・ディズニー・ジャパン
クレジット:(C)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

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