石毛翔弥の声優としての信念

石毛翔弥 写真:武馬怜子
石毛翔弥 写真:武馬怜子

―――『チ。』は、「地動説」をめぐり、知的探求心の強い人物にフォーカスを当てた作品だと思います。天文学とは分野は違えど、演者さんの演じることへの欲求や、役を深く掘り下げて考える所などは、通ずる部分があるのではないかと想像するのですが、いかがですか?

「通ずる部分はあると思います。ただ、演者さんの数だけ作品との向き合い方があると思いますが、僕は演じる役によっては深く掘り下げちゃいけない場合もあると思うんです。全部を知っておかないと演じられない役もあるし、逆に原作がある作品は、先のことを事前に知ってしまうことで予定調和になりかねないお芝居もあったりする。その辺りの取捨選択が大事な仕事でもあるし、だけど選択をするかしないかという追及の仕方も演者さんのスタンスによってはあるので、その意味ではすごく通ずるところがあるかなと思います」

―――石毛さんは以前、別の作品でイベント用のコスプレ衣装を作るという企画をされていましたが、物事には熱中される方ですか?

「自分が好きなものに対してはそうですね。だからお芝居もそうだし、僕は物を作るのがすごく好きなので。今は年を重ねてバランスを取れるようになりましたが、もっと若い頃は、ああいった作業や自分が楽しいと思ったことは寝食を忘れるほど追及していた時期もありました」

―――物作りがお好きということは、お休みのときも何か作られたりするのですか?

「自宅の家具とかは自分で作ってますが、断捨離も好きなので、作った家具が空っぽの時もあります。ただ、自宅の家具って1回作ったらもう作れないので、最近は作ってないんですが(笑)」

―――最後の質問です。本作のキャッチコピー「命を捨てても曲げられない信念があるか? 世界を敵に回しても貫きたい美学があるか?」にちなんで、石毛さんにとっての信念や美学を教えてください。

「僕は、この仕事をする上で “自分の存在を感じてもらわないこと”を大切にしています。ありがたいことに、出演した作品数が増えてくると僕が出演することがきっかけで興味を持って見てくださる方もいるので、役者としての自分を出さなきゃいけないとも思っています。ですが、あくまでも“役”であって、作品において“僕”の存在は必要ないのかなとも思っていて。作品が第一なので、いかに見てくださる方に邪念を植え付けないかを常に意識しています」

(取材・文:あさかしき)

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【了】

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