主人公を支える人々との出会いに心が温まる
だがそれでもヤジッドは、自力で職を求め店を転々とし、時にはバーテンダーとして生活を維持しながら、再起を期しパティスリー世界選手権に出場するという目標に突き進み、そのチャンスを得る。国内予選では、ヤジッドを罠に嵌め失職に追い込んだ元同僚を破ってみせる。
同時にヤジットは、病に伏す養母を見舞う代わりに自ら作ったデザートをプレゼントする。特訓に明け暮れる日々を送り、会いに行けない代わりに最上級の見舞いの品を送ったことで、養母は元気を少し取り戻し世界一を目指すヤジットにエールを送る。
パティスリー世界選手権出場への道のりは険しいもので、様々な妨害や苦難がありながらもヤジットを応援するかつての同僚や、その才能に惚れ込んだパトロンの協力を得て、ついにヤジットらのフランスチームは栄冠を手にする。困難なミッションを達成するに至るまでの過程でヤジットが恵まれる、彼を支える人々との出会いが本作を語る上で欠かせないポイントだ。
ヤジットが才能あるパティシエであり、努力を惜しまなかったことはもちろん、出会いにも恵まれその地位を得たことは本作を見れば明らかだ。
優勝後、ヤジットは世界中の一流ホテルからのオファーを受けながらも、フランスにとどまり、自らの店舗で「パリ・ブレスト」をはじめとするデザートを提供しながら、故郷のエペルネに住む養父母の元にも訪れる。それがヤジットなりの恩返しなのだろう。