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新海作品ならではのリアリティー〜映像の魅力

ベルリン国際映画祭にて【Getty Images】
左から新海誠監督原菜乃華ベルリン国際映画祭にてGetty Images

本作の映像の最大の魅力は、なんといってもその緻密さにある。

一般的なアニメの場合、車のナンバーや看板の文字といったディテールは描かれないことが多い。一方、新海作品では、こういったディテールまで事細かに描かれており、現実世界をそのままトレースしたかのような独自のリアリティを表現している。

また、通常のアニメでは、各セクションから上がったセルや美術背景を色彩設計がチェックし、カラーモデルを参照に調整を行うが、本作では新海自ら全てのカットに目を通している。青を基調とした新海独自のトーンは、こういった途方もない労力によって生み出されているのだ。

また、躍動感あふれるCG表現も本作の大きな特徴だろう。これらのCGは『秒速5センチメートル』(2007)以来すべての新海作品を担当してきた竹内良貴が陣頭指揮をとり、社外のクリエイターと相談しながら制作。特に、ミミズや椅子といった3DCGパートは作画素材に馴染むよう全て映像処理が施されており、アニメパートと3DCGパートが違和感なく融合している。

加えて、車や電車などのアセット(3DCGに必要な素材データ)には、過去の作品で使ったものに加え、ロケハン時の地理設定から新たに制作。特にこだわっているのは廃遊園地の遊具で、質感を表現するためにテクスチャではなく美術担当が絵を描き、アセット化しているという。

そして、忘れてはならないのが、本作に登場する日本各地の風景だ。本作は、恋愛映画、アクション映画であるとともに、現代日本の風土を切り取った「風景映画」でもある。これらの風景は、撮影監督の津田涼介が、『天気の子』の制作後にバイクで日本列島を縦断した際に制作した資料を使用しており、旅行時に感じた空気感が大いに役立ったという。

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