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随所で打ち出されるベトナム戦争のイメージ

(C) 2023 20th Century Studios
C 2023 20th Century Studios

また、作中でのアメリカの戦いを“悪”として描いている点は、本作がアメリカ映画であることを考えるととても興味深い。過去、アメリカが自国の戦争映画を自虐とトラウマで語るのはベトナム戦争であった。

そういった意味でも『ザ・クリエイター/創造者』には、ベトナム戦争のイメージがそこかしこに強く感じられるのである。舞台となるニューアジアと呼ばれる場所はインドシナ半島であり、現地に乗り込むアメリカ軍部隊の雰囲気は一昔前の荒くれた海兵隊のようである。

アメリカ軍が使用した手足の付いた“爆弾”ロボット(AIではない)を敵地に走らせ自爆させるという兵器はベトナム戦争を描いた『プラトーン』(1986)でのクライマックスでアメリカ軍司令部に爆弾を抱えて走り込み自爆するベトナム兵そのものである。

一見ユーモラスではあるが、その意味するところを知っているとあまりにグロテスクなシーンである。そして地球の軌道上から攻撃が可能なアメリカの巨大な宇宙船ノマドの存在は、アジアにおけるアメリカの暴力の象徴でもある。アメリカの攻撃は常に空からやってくるのだ。

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