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『空の帝国 アメリカの20世紀』生井英考(講談社学術文庫)


出典:Amazon

『ザ・クリエイター/創造者』で強くイメージとして入り込んでくるのは、アメリカという大国の正義と一方的な暴力である。なかでもノマドと呼ばれる巨大な宇宙船による無差別攻撃は、まさに空という高所からもたらされる一方的なアメリカの暴力を象徴する存在であった。

『空の帝国 アメリカの20世紀』生井英考(講談社学術文庫)は、無邪気な空への憧れから、アメリカがいかにして空からの大量殺戮をおこなうようになり、空を支配していったかという、空という視点からみたアメリカ近代史である。

1903年に歴史上初めて有人動力飛行に成功したアメリカ人のライト兄弟に始まり、おなじくアメリカ人であるチャールズ・リンドバーグが1927年にニューヨーク・パリ間の単独大西洋横断無着陸飛行に成功する。

20世紀初頭、アメリカは航空機万能主義という「空」への信仰を「翼の福音」と呼んだ。こうした無邪気な空への信仰は、戦争の主役が航空機へと変わった第二次世界大戦になると非情な攻撃へと変わってゆく。無差別爆撃である。ドレスデンや東京への空襲、そして広島・長崎の原爆投下へとエスカレートしてゆく。

『ザ・クリエイター/創造者』は、アメリカが自国の論理によって一方的な暴力を他者にふるう“悪”として描かれるが、それは常に空からやってくる。本書はアメリカと「空」との関係を知る上でとても面白い一冊である。

(文・すずきたけし)

【作品概要】
監督・脚本:ギャレス・エドワーズ (『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』)
キャスト:ジョン・デヴィッド・ワシントン, 渡辺謙, ジェンマ・チャン, アリソン・ジャネイ, マデリン・ユナ・ヴォイルズ
公式サイト
(C) 2023 20th Century Studios

【ストーリー】
遠くない近未来、人を守るはずのAIが核を爆発させた——。人類とAIの戦争が激化する世界で、元特殊部隊の〈ジョシュア〉は人類を滅ぼす兵器を創り出した“クリエイター”の潜伏先を見つけ、暗殺に向かう。だがそこにいたのは、兵器と呼ばれたAIの少女〈アルフィー〉だった。そして彼は“ある理由”から、少女を守りぬくと誓う。やがてふたりが辿りつく、衝撃の真実とは…。

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