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被写体の不気味さを際立たせるシャマランの魔術ー映像の魅力

本作の撮影を手がけた日系アメリカ人のタク・フジモト
本作の撮影を手がけた日系アメリカ人のタクフジモトGetty Images

本作には、衝撃的なシーンが随所に散りばめられている。最も目を引くのは、ビル作業員の自殺シーンだろう。大量の作業員が屋上から空を舞い、ぼたぼたと落ちてくる絵面は、観客の脳裏に焼き付くこと請け合いだ。

また、周囲の人々がいきなり止まり全く動かなくなるという、狂気に魅入られた人々が見るビジョンも、本作の不気味さに拍車をかけている。

撮影を手がけたのは、『羊たちの沈黙』(1991)で知られる、ハリウッドトップクラスの撮影監督タク・フジモト。シャマラン作品を手がけるのは、『シックス・センス』(1999)、『サイン』(2002)に続いて、本作が三度目となる。

登場人物の会話のカットも、極端なクローズアップで頭の部分を不自然に切り取ることで、どこか不安定な印象を与えている。

また、エリオットがベッドの上の人形を見つけ、ジョーンズ婦人に叱責されるシーンでは、ベッドの上の人形のカットから、いきなり怒鳴るジョーンズ婦人のカットにつながり、なんともいえないぎこちなさが漂っている。登場人物を真正面から捉えた小津安二郎ばりの切り返しショットもかなり不気味だ。

また、エリオットが怪現象の元凶として考える植物もどこか気味が悪い。映っているのはなんの変哲もない植物なのだが、風にそよぐだけで悪魔のように見えてくる。ただのモノをただならぬモノに見せる演出は、シャマランの面目躍如といったところだろう。

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