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映画に込められた父への愛と反発

©2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED
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 母に愛されたいと願ったミナ、父親がわりの教授に愛されたいと願ったマデリン、そして父に愛されたいと願ったイシャナはいずれも、受動的に「見られる」位置に自己を置き、擬態と模倣を駆使することで、絵画のなかの染み、法から逸脱する主体となった。

 ミナ、マデリン、そしてイシャナはそれぞれ、自分を見つめる眼差しを感じることで染み=主体となり、そのことでようやく自分を愛せるようになったのではないか。

 表面的な類似に騙され、イシャナを父親の二番煎じとしてしか見ようとしない批評家たちにとっては、『ザ・ウォッチャーズ』は二流の贋作絵画のように映るかもしれない。

 だが、よくよく目を凝らしてみれば、あまりにも有名なハンス・ホルバインの絵画「大使たち」のように、染みにしか見えなかった部分には、実際には骸骨が描き込まれていたことに気がつくだろう。父への愛と反発を奇妙な形でデビュー作に潜ませたイシャナの擬態を、今後も注視し続けたい。

(文・冨塚亮平)

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