いま観ても刺激的…。映画『ガープの世界』は名優ロビン・ウィリアムズの転機となった名作。改めて魅力を解説
映画『アラジン』のジーニー役や、オスカー賞を受賞した映画『グッド・ウィル・ハンティング』にて、才能を発揮した、故ロビン・ウィリアムズ。彼はその多彩な才能を発揮する前に、比較的「普通の男性」とも言える役を見事に演じていた。今回は米colliderの記事を参考に、名作『ガープの世界』について紹介する。
ロビン・ウィリアムズが演じる「普通の男」
映画『ガープの世界』の魅力
俳優ロビン・ウィリアムズは映画史の中でも偉大な存在とされている。たとえ、映画批評家に最悪な作品と評価されたとしても、彼の出演作品は、不思議と記憶に残る。
1982年の名作『ガープの世界』(1982)でブレイクを果たしたウィリアムズ。この作品は、アンソロジーコメディ映画『Can I Do It… ‘Til I Need Glasses?(原題)』や、ロバート・アルトマン監督『ポパイ』に続く、ウィリアムズにとって3作目の映画作品だった。
映画『ガープの世界』は、ある作家が自身の冒険を記録し、その経験をもとに物語を紡ぐ、魅力的で古風な青春物語。主人公ガープは大きな夢を持った魅力的な若者で、親近感を呼び起こす。注目すべきは、エネルギッシュなウィリアムズが、人の気持ちを煽り立てる扇動者ではなく、映画の中で観察者の立ち位置を取っているということである。
本作のあらすじはこうだ。看護婦のジェニーが、男に束縛されず子供だけ欲しいという願望から、病院に運び込まれた傷病兵と一方的に性行為をする。やがて生まれた子供はガープと名づけられた。思春期を迎えた学生のガープは、所属するレスリング部のコーチの娘ヘレンに恋をする。
だがある日、ジェニーとガープは突然ニューヨークへ出発する。その後、親子は揃って小説家を志すようになり、ジェニーはウーマン・リブのベストセラー作家に。ガープも作家の才能が開花し、へレンと結婚するが、順風満帆の人生は果たして訪れるのか。
本作は、ジョン・アーヴィングの原作をスティーヴ・テシックが脚本化し、ジョージ・ロイ・ヒルが監督を務めている。ウィリアムズの演技の細部へのこだわりは、ガープの子供時代を非常に興味深いものにしている。また、映画はあらゆる困難を経て、大人になっていくガープの姿を淡々と追っていく。
また、本作では、トランスジェンダーの役であるロバータ・マルドゥーンを真摯に描いているという点でも注目に値する。
『ガープの世界』公開当時、トランスジェンダーは悲劇、あるいは笑いの対象とされることが多かった。しかし、本作はそうしたステレオタイプには与しておらず、「トランスジェンダーを前向きに描いた作品」として語り継がれている。
ウィリアムズの演じてきた多彩な役柄の中でも比較的「普通の男」を演じた本作。ガープ役は、ウィリアムズの期待していたような役ではなかったようだ。しかし、彼の映画史における、最も重要な役柄の一つと言っても過言ではないだろう。
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